Q.まず、先生が税理士になられた経緯について教えてください。

 私が税理士を目指したのは、もともと強い憧れがあったわけではありません。小中学校の頃は勉強が好きではなく、高校は自動車科に進みました。卒業後はそのまま就職することも考えましたが、将来に楽しさが見えず就職せずに過ごしていました。しかし「このままでは良くない」と思い立ち、ワーキングホリデーでニュージーランドへ行くことにしました。 

Q.すごい思い切りですね。ニュージーランドという場所になにか理由はあったのでしょうか。

 どうしてもニュージーランドに行きたかった、というよりは「何をしたいか分からない自分」を変えたかったんです。自分を誰も知らない環境に身を置けば、何かが変わるかもしれないと思い飛び込みました。 
 言葉も通じず、頼れる人もいない環境で一年間生活する中で、親と暮らしていた頃の安心感や支えられていたことを強く実感しました。生活やお金の管理に直面し、何度も帰りたいと思う日々でしたが、人との出会いや小さな達成を積み重ねる中で、自分で生きていく覚悟のようなものが芽生えていきました。「成功体験が自信になる」という言葉を、本当に実感した一年だったと感じています。 

 帰国後、就職を試みましたがうまく進まず、それなら自分で何か始めるしかない、と起業を考えました。その際に「起業するなら数字に強くなった方がいい」というアドバイスを受け、簿記を勉強し始めました。勉強は得意ではなかったものの、資格試験に合格することで前に進んでいる実感が得られ、それが励みになりました。簿記2級・1級と取得していく中で、その延長に税理士という資格があることを知り、学ぶうちに興味が深まりました。
 そして、28歳で初めて税理士事務所に就職しました。大変なことも多かったですが、同じ目標を持つ仲間の存在に支えられ、継続して学習に取り組み、税理士資格を取得しました。振り返ると、最初から目指していた道ではなく、模索と経験の延長線上に自然とつながっていった道だったと思います。

Q.決して楽な道のりではなく、自分のやるべき道を模索された結果が税理士だったんですね。ではそこから現在の事務所に独立されるまでどのような経緯があったのでしょうか。

 税理士事務所に最初に就職してから、約89年ほど働きました。ただ、その間ずっと心のどこかに「自分は税金や数字の専門家としての領域にしか触れていない」という感覚がありました。お客様は経営者ですから、相談される内容はお金のことだけでなく、人の問題や組織の悩み、将来への不安など、もっと広く深いものが多い。それに対して、当時の私は「会計・税務の知識」以上の言葉を持てず、経営者の力になれていない感覚がありました。そこに限界を感じました。
 そこで、経営そのものを知る必要があると思い、ベンチャー企業へ転職しました。そこでは管理部門だけでなく、必要なことはなんでもやりました。経営の現場がどう動いているのかを理解したかったからです。 
 その会社は事業の構造上、黒字化するのに年単位の時間がかかり、私は当時の社長とともに資金調達のために奔走していました。しかし、資金が枯渇していき、いよいよ事業を続けられなくなったとき、弁護士を呼び、事業撤退の判断をしたのは私でした。その責任から最後まで会社に残り、株主や関係者に頭を下げながら清算を進めました。 
 自分でトリガーを引いた分、その責任と重さは、今でも忘れません。 
 当時はただ「失敗した」と思っていました。でも、今振り返ると、あの経験がなければ「お金が会社をどう動かすのか」「経営は覚悟の上に成り立つ」ということを、ここまで深く理解することはなかったと思います。 
 だからこそ今、私は新しく事業に挑戦しようとする人が、資金に困って夢を手放すことのないようにサポートしたいと強く思っています。事業が芽を出すまでの間を支える資金の設計、動かし方を一緒につくることこそ、税理士としての自分が提供できる価値だと感じました。 
 独立した当初は、会計事務所よりもコンサルティングの仕事に比重を置いていました。しかし昨年、「自分が組織をつくりたい」という思いが強くなり、改めて税理士事務所としての体制を固め、人を採用し、今年から事務所経営を本格的にスタートさせました。 

Q.事務所独立までも、波乱万丈なストーリーがあったんですね「組織を作りたい思われた背景には、どのような心境の変化があったのでしょうか

 コンサルティング業務に注力していた時も、お客様の経営に向き合う中で、私はいつも「この人が一歩踏み出す瞬間」に立ち会えることに、大きな喜びを感じていました。けれど同時に、自分一人で関われる数には限界があることにも気づきました。目の前のお客様に全力を尽くすことはもちろん大切ですが、「挑戦したい」と思う人がもっと増え、その背中を押し続けられる環境をつくるには「組織」という形が必要なのだと感じるようになりました。 
 「成功」は人それぞれですが、どんな形であれ、事業が続いていかなければその成功には辿り着けません。だからこそ、立ち上げの一歩から、その継続まで、まるごと支えられる体制をつくりたい。そう考えたとき、共に伴走できる仲間が必要であり、挑戦する人を応援できる文化を持った事務所をつくることが、私の次の目標になりました。 
 私自身、小さな「できた」の積み重ねが自信へとつながり、自分の人生を自分で選んで進む楽しさを知りました。それは大変な道でしたが、その大変さすら前向きに感じられるほどに充実していた経験です。この感覚を、もっと多くの人が味わえる世の中であってほしい。だから私は、挑戦する人を増やしたいし、挑戦を続けられるための組織づくりに、本気で取り組んでいます。
 
創業支援や融資、補助金のサポートといった実務的な支援だけでなく、「起業してみよう」と思える人を増やすための啓発や学びの場づくりにも、これから力を入れていきたいと思っています。 

 Q.挑戦する人を増やしていきたいという熱い思いが伝わってきます。起業する人を増やしていくという目標の中でどんな部分が課題だと感じていらっしゃいますか?

 起業しやすい環境は整ってきたと言われていますが、それでも多くの人は「本当に自分でやっていけるのだろうか」という不安に立ち止まります。会社員であれば毎月お給料が入りますが、起業すると自分で稼いでいかなければならない。その「飛び込む瞬間の恐怖」が大きな壁になっていると私は感じています。
 だからこそ、私はまず不安を可視化することを大事にしています。事業が軌道に乗るまで、売上より経費が先に出ていく時期があります。その期間を維持するために創業融資で資金を確保し、お金という形で“時間”を準備する。例えば「この期間は給料が出なくても大丈夫」という明確な見通しがあるだけで、人は挑戦しやすくなります。挑戦を継続できるだけの“余白”を一緒につくることが、私の役目だと思っています。
 また、私は過去にベンチャー企業に転職し、思うようにいかず資金が回らなくなった場面にも立ち会いました。その経験は、単なる知識ではなく、「どこでつまずきやすいのか」「どう先手を打つべきか」を肌で知ることにつながりました。その経験を支援の中に活かすことができます。
 
起業は「自分で考えて進むもの」ですが、人は考えが絡まると、動けなくなることがある。そんな時に、税理士は“数字を見る役割”だけでなく、“思考を整理する壁打ち相手”にもなれると私は思っています。実際、経営者と会話する中で、本当の課題が見え、次に取るべき一手が明確になることは多いです。 

Q.その思いを叶えるために、先生自身が持つ目標やビジョンはありますか

 私が目指しているのは「挑戦する人を増やし、その挑戦がきちんと成果に結びつく仕組みをつくること」です。新しいことを始めようとするのは簡単ではありません。リスクが伴いますし、不安もある。それでも一歩を踏み出した人には、確かな価値があると私は思っています。その価値が結果につながるよう、適切な支援を届けたいと考えています。
 そのために、起業を考える人が学び、準備できる場を整えたいと思っています。心構えや基本的な知識を身につけられる勉強会やカリキュラム、必要に応じて専門家や投資家とつながれる仕組みなどです。創業期は特に、事業計画・資金計画・人材・税務といった課題が複雑に絡むので、そこを伴走できる体制を整えたいと思っています。 

Q.そんな環境があれば、もっと起業を選択肢に入れる人が増えそうな気がします。では、そんなビジョンを叶えるための事務所づくりの目標はありますか。 

 今、事務所を運営していて感じている課題は、「私自身の想いを、組織全体の文化として根づかせていくこと」です。もちろん私が先頭に立って旗を振ることは必要です。ただ、理想を言えば、メンバー一人ひとりが自分の意思で新しいことに取り組み、組織の中に挑戦の循環が生まれていく状態をつくりたいと考えています。
 
私たちは「挑戦する人を応援する」仕事をしていくからこそ、事務所の中で挑戦する人が育っていく必要があると思います。だからこそ、まずは内部で新しいことに手を挙げる人を肯定し、応援し合える風土をつくりたいと考えています。
 
そのためには、同じ方向を向いて歩ける仲間が必要です。全員が最初から同じ熱量である必要はありませんが、「挑戦する人を応援したい」という価値観に共感できる人と一緒に働きたい。そして、基礎となる知識やスキルを学ぶ体制も、さらに整えていきます。
 
まず内側から、私たち自身が挑戦を楽しめる組織づくりをしていきたいです。 

Q.ありがとうございます。では、日々の業務の中でMyKomonをお役立ていただけている部分はありますか 

 私がMyKomonで特に助かっているのは、まず手間をかけず工数の見える化ができる工数管理です。また、会計担当者養成動画もスタッフ教育に利用しています。忙しい中でも教育の質を落とさず、非常に教育の効率が良くなりました。
 また「挑戦する人の成功をサポートする」という理念は、創業のサポートに限りません。次の世代へ事業や資産を引き継ぐ“相続”も、立派な挑戦だと考えています。そのバトンが円滑に渡っていくよう、無料の相談会・セミナーを開催し、MyKomonの相続財産シミュレーションも積極的に活用しています。数字や将来のイメージが見えることで、お客様も安心して次の一歩を踏み出せると感じています。 

 Q.最後に、経営者の方にメッセージをお願いします

 すでに経営されている皆さんには、「こんなことまで相談していいのだろうか」と思うような内容こそ、もっと積極的に税理士や専門家へ相談してほしいと思っています。もちろん、全てに即対応できるとは限りませんが、真剣に向き合い、課題解決に力を尽くしてくれる専門家は必ずいます。
 また、これから経営者になることを考えている方へ。挑戦したい気持ちがあっても、不安が大きく、一歩を踏み出せないこともあると思います。その不安が具体的に何なのかを言語化し、準備によって減らせるものなら、まずは動いてみてほしいです。必要な資金や計画の整理は、専門家がしっかりサポートできます。
 挑戦する人が、一人でも多く成功に近づいていけるよう、私たちは支援を続けていきます。小さな一歩でも、それは大きな価値のある一歩です。もし迷っているなら、まずは相談してみてください。 

ありがとうございました