Q.税理士を目指されたきっかけは何ですか?
一番のきっかけは父ですね。父が会計の仕事に携わっていたこともあり、自然とその道に興味を持ちました。中学3年生の頃には簿記の勉強を始めていましたし、高校時代には確定申告の手伝いをしたこともあります。
高校卒業後は東京の大学の経営学部に進学したのですが、もともとは簿記の専門学校に通うつもりでした。「税理士資格が取れたらそれでいいや!」と思っていたので、大学で学びたいという強い志があったわけではないんです。ただ、父に大学進学を強く勧められ、そこまで望むならと思い大学に行くことにしました。同時期に専門学校にも通っていたので、当時はダブルスクールで結構忙しかったですね。
Q.お父様の影響だったのですね!その後、開業するまでの流れを教えてください。
大学卒業後すぐに税理士の資格を取得し、東京の事務所で3~4年ほど働きました。その後、25、6歳のときに父のいた事務所に入り、27歳で独立開業しました。昭和61年のことです。今年でちょうど40周年になります。
細かくお伝えすると、父は会計事務所ではなく、弁護士事務所に勤めていました。そこで会計業務に携わっていて、ある程度仕事を任されていたようです。その弁護士事務所の方が「倅さんが資格を取ったなら倅さんと独立しなよ」と言って、開業を後押ししてくださいました。父と職員4名、そこに私が加わって6名で開業しました。すでにお客さまもある程度いたので、ゼロからのスタートでなかったのはありがたかったですね。
Q.40周年おめでとうございます!事務所の特徴はどんなところですか?
うちは「雑食系」の事務所です。相続、医療法人、外国人対応など、幅広く受け入れています。
事務所がある足利市は比較的古い時代から商業都市として栄えていました。そのため、私が昭和61年に開業したときも街には既に大きな事務所もあり、新参者だったんですよね。職員が営業にでると「江原さんの事務所?知らないね」と言われることもありました。そこで、どうやって事務所を伸ばしていこうかと考えたとき、地元で「何でもやってくれる事務所」として、他の事務所が断るような業務も積極的に受け入れていこうと思ったんです。
「特化型じゃないと意味がない」と言うコンサルタントの方もいらっしゃいますが、私はそうは思っていません。うちは地域密着型でやっていく以上、柔軟に対応することがすごく大事だと思っています。もちろん、業務によっては外部にお願いすることもありますが、まずは自分たちで「やってみる」。初めのうちは、失敗してはまた挑戦しての繰り返しですが、そうすることで仕事の流れが見えてきますし、対応力も自然と身についていくんですよね。だから、特化型の事務所ではなく、柔軟性と対応力を重視しています。これは田舎で勝ち抜くための戦略であり、東京ではまた別かもしれませんね。
Q.お客さまとの関係で心がけていることはありますか?
信頼関係を大切にしています。お客さまとのつながりで成り立っていることが多いので、相手に寄り添うことは常に意識しています。時には一緒に遊びに行ったり、ありがたいことに地元の農産物をいただいたりすることもあります。
今は、自分がすべてのお客さまと直接お会いしているわけではないので、職員にもある程度は自由に、柔軟性を持って対応してもらっています。そこは職員の素質にお任せなのですが、自分と同じ思いを持ってお付き合いしてくれているのでありがたいです。経営者と接していくには、型にはまった対応ではだめなんですよね。管理が甘いと言われるかもしれないけど、やっぱり職員を型にはめてしまっても職員の伸びしろが出てこないと思っています。
Q.江原先生がこの仕事でやりがいを感じる部分はどういったことなのでしょうか。
人とのつながりを感じたときです。数字が右肩上がりに伸びていくのを見るのは面白く、正直そこをやりがいにしていたときもありました。それが悪いというわけではなく、数字がやりがいになるのであればそれはそれでいいとも思っています。しかし、今はそれ以上に、人とのつながりが増えていくことが楽しいです。いろんな人と接することで、自分の考え方も広がっていきます。
事務所が大きくなり、経験を積み、接するお客さまが多くなってくると、私どもがやっているサービスなり考え方は、ある程度かたちができてきます。そして、その考えをお客さまへお伝えしたとき、自分では意図せずとも感謝されることがあります。でもそれは、私自身が生み出した考えだけではありません。約60年の人生で出会った、お客さまや先輩、沢山の方々から学んだ考えを私を通してお客さまへ伝えています。自分が考えていることなんてたいしてないのかもしれません。でもそうやって人に伝えられるのは、たくさんの方と接してきたからだと思っています。
Q.40年という長い期間、やりがいをもって働いてこられたのですね。素晴らしいです!
もちろん私も明日仕事したくないな、と思うときはありますよ。明日以降のことを考えたとき、もっとたくさん嫌なことはでてくるじゃないですか。仕事上の悩みもありますよ。社長さんは税理士に悩みを相談できるかもしれないけど、税理士は誰と会計事務所の経営について相談するのかなとかね。でも、そういう悩みはなるべく夜には考えないようにすることです。お昼の時間であれば嫌でも会社に来て、動き出してしまえば、嫌だと思っていたことも案外イージーに済んだりします。夜の時間は止まっているから解決できないしね。
Q.今後の事務所の展望について教えていただけますか。
海外で公認会計士として働いていた娘がおりますので、将来的には娘に事務所を引き継いでもらうことを考えています。娘は英語も堪能で、海外とのやり取りにも対応できる力があります。今は日本の国際的な立場が少し弱く、すぐに海外展開というわけにはいきませんが、将来的には新しい分野にも挑戦できるのではと考えています。
事務所の仕組みはすでに整っているので、娘がその流れに乗って業務を進めることは可能です。ただ、私が40年かけて築いてきたお客さまとの信頼関係を、短期間で引き継ぐのは簡単なことではありません。私自身も、受け入れてもらうまでに時間がかかりましたから、娘にも焦らずじっくりと歩んでほしいと思っています。
今後、事務所の規模をどうするか、どんな方向に進めるかは娘の判断に任せるつもりです。拡大するのか、現状を維持するのか、それとももっとコンパクトにするのか。私があまり自分の考えを押しつけすぎると、娘もやりづらくなってしまいますから、基本的には自由にやってもらいたいと思っています。
私の役割は、これからは前に出すぎず、必要なときに支えること。娘が自分の考えで事務所を動かしていけるよう、環境を整えていくのが私の今の仕事だと思っています。
Q.お父様、江原先生、娘さんと3代の繋がりを感じました。
MyKomonはお役に立てていますでしょうか。
もちろん役に立っていますよ。非常に使い勝手がよく、事務所の中心はMyKomonになっています。
江原先生、ありがとうございました!